「……贅沢な悩みだって、自覚はあるんだけど、さ」

「すごい贅沢だし、我侭だって自分でも思うんだ。でも、やっぱり辛く、て。……だからちょっとだけ、愚痴ってもいいかな」


「毎日さ、時間が長いんだ。……思いっきり寝てたりパソコンに集中してて何時間とか潰したりしたらパニックになるくせにね。でも、ホントにすごい長い」

「時間が長いと思うことなら私もあるけど？」
「や、私もあるけどね。ミヤのは多分それとは違うんだと思うよ」

「うん、あたしもそういうのあったけどね。でもやっぱ違うんだ。朝……でも昼でもいんだけど、まあ朝起きて、なんか食べて、顔洗って、着替えたり着替えなかったりで、んで、まあ携帯いじったり音楽聴いたりでダラダラして、最近はまたゲームとかするようになって。大体この辺で昼になって、そのときは焦るっていうか、「もう午前が終わる」ってショック？みたいな感じでさ」

「それこそ例のパニックってやつ？」
「時間に追われてるみたいな感覚、だっけ」

「パニックまではいかないけどね。でも地味にちょっと不安定気味になるときもあって」

「でもまだそれはいいんだよ。そのあとさ、昼飯食べてからがひどいの。昼飯食べて、さあこれから……なにしよう、ってなっちゃうの」

「色々あってどれを選ぼう、とかじゃなくて、なにしたらいいのかわかんない「なにしよう」なんだよ。多分やろうと思えばやることなんかいくらでもあるんだ。パソコンだってゲームだって、本読んでもなにか書いたっていい。でもそこまでの……気力っていうのかな、それがないんだ」

「家族にもさ、言われるんだよ、あれは？これは？って。でもどれもピンとこない。結局手軽な携帯に行くのが多いんだけど、それも面白くなくてすぐになにしていいのかわかんなくなっちゃって」

「そうなるとさ、本気でなにしていいのかわかんないんだよね。そんでそれ言ったら母親なんかは「なにもしなくていいじゃない」って言うんだけど、なにもしないってよくわかんない、というか……なんだろう、なにもしないって状態が耐えられないんだよ。いっそ不貞寝とかできりゃいいんだけどそういうときに限って眠れもしなくて」

「なにもしないって多分、案外難しいんだよね。少なくともあたしにはすごいしんどい。なにしたらいいのかわかんなくて、なにもする気が起きなくて、なにも楽しいと思えなくて、そんでそんな自分とそんな状態が許せないの」

「許せないって思ってもそれこそどうしたらいいのかわかんないし、ずーっとモヤモヤムカムカしてなにもしないまま時間が過ぎてさ、それでまたなにやってんだ自分、って無駄に時間過ごしたことにムカついてショック受けんの。バカだよね」

「ホント自分でも意味わかんなくてさ。原因もわかんなきゃ改善策もわかんないし。そういうときって時間が過ぎるのが本当に遅くてさ、もう嫌だし苦しいから早く終わってほしいのに全然進まないの。だからずっと苦しくて……ホントに嫌になる」

「贅沢なのはわかってんだ。みんな毎日学校行ったり働いたりして、そこから頑張って自分の時間作って趣味とか色々やってんのに、時間がありすぎて嫌だとかどんな我侭、って」

「でも、それでも……あたしには、ホントに辛い」



―――2010/10/10 22:34

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