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2007/06/20 20:44 (Wed) - 創作メモ
『夢見』、と呼ばれる存在がある。
エルフ王や精霊王はもちろん、エルフの長老率いる元老院の下につき、さしたる権限も持たない存在だが、場合によってはそれらよりも強い力を持つ。特にその言葉は時に王をも凌ぐほど強い影響力を持ち、エルフ王、精霊王と並んで一般のエルフには神格化された存在としてある種の信仰めいたものの対象となっている。 そしてその理由は、彼らが『夢見』と呼ばれる事に関係があった。 『夢見』の文字通り、彼らは夢を見る。一般に「予知夢」と呼ばれる先読みの夢だ。エルフの中でも夢見の者だけが持つ力であり、それは特にエルフや精霊に危険が迫ったときに発現し、絶対に外れない。予見、予知、そういった類のものにありがちな曖昧さは、夢見のそれにおいては全くない。当たる当たらないの問題ではなく、それは「事実」なのだ。 その力を以て一族を導くのが、夢見の役目である。 『夢見』は、歴史の中に常に一人しか存在しない。当代の夢見が死ぬと同時に次代の夢見にその力は引き継がれるが、それまでは多少予見の力がある程度でしかない。 自らが死したのち、次の夢見となる者を『見』る。それが夢見の最後の役目だ。 そしてもう一つ、夢見には大きな特徴がある。 それは、夢見は必ず女性であるという事だ。 どういう理由や因果があるのか、はたまた理由など全くないのか、それは夢見本人達にもわからないのだという。 ともあれその座につくのが必ず女性であるという事実から、『夢見』や『先見』といった呼称の他に『夢見の姫』『先読みの巫女』などと呼ばれたりもする。 それが、エルフにおいて大きな意味を持つ『夢見』という存在だった。 「…………それが、この子?」 目の前の少女を見て尋ねると、傍らに浮かぶイフリルとシルフィがこっくりと頷いた。 突然転がり込んできた鮮やかな金髪の少女は、リィと名乗った。フルネームをリィンバーム・シュイといい、フィアとウィグが今しがた説明を受けた『夢見の姫』その人なのだという。 「なんつーか……」 「こんなちっこいのに……って言ってもエルフは長命種だし、実年齢はもっといってんだろうけど……それにしてもな……」 「いや、ちっこいとかは別にいんだけどさ。そんなエラい人なのにこんなとこいていいの?」 つーかよく来させてくれたよな。 何の気なしのフィアの言葉に、イフリルとシルフィは顔を見合わせ沈黙する。フィアは戸惑った様子で二人とリィを見比べ、ウィグは胡座をかいた膝に肘をついて顎を支えながら、呆れた顔でフィアを見た。 「……バカだバカだとは思ってたけど、本当にバカだなお前」 「なぬ!?」 「そんな大事なオヒメサマ、得体の知れない人間の前に出すわけないだろ。大方、レヴィンに会いたくてこっそり抜け出してきたんじゃないのか」 台詞の後半はリィへ向けられたものだ。それも質問というよりは確認の意味に近い。リィはウィグの視線を受け、神妙な顔で頷いた。 「エルフの掟、厳しい。リィは夢見で、大事。長老言ってた。リィ、レヴィンに関わる。リィも外の世界、人間に、興味持つ。それは、いけない。言ってた」 ほんのわずか顔を歪めて話す様子から、リィ自身はそうした束縛を快く思っていないらしい事が窺える。 「要するに、エルフにとって夢見ってのは、自分達の行く道を示してくれる大事な指針ってわけだ」 「それがうっかり外の世界に興味持っちゃったりしたら大変だから、もうレヴィンとも会わせない方がいい……ってことか」 ウィグとフィアの言葉を受けて、リィは再び頷く。 「リィ、レヴィンに会いたい。何回も言った。でも聞いてくれない。だから自分で来た」 きっと今頃はリィを探して大騒ぎになっているだろう。 それを予想したイフリルとシルフィは乾いた笑みを漏らしたが、それでもリィに帰れとは言わない。自分達だって同じ立場に置かれたらそうするだろうから。 人間、エルフ、精霊、そしてハーフエルフ。 今この部屋に集まった者達は、種族も性別も、見事なまでにバラバラだ。 それでも五人はここにいる。敵対しいがみ合ってきたはずの人間とエルフですら、それを全く気にしない様子で話をしているのだ。 彼らを繋ぐのはただ一つ、レヴィンというエルフを心から好いているという、その一点だけだった。 PR COMMENT COMMENT FORM
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