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2007/12/07 20:02 (Fri) - 創作メモ
「左舷前方、十一時の方向に異常な風の流れを確認!」
カレンの声が響き、緊張がブリッジを包む。 「光学映像、メインモニターに表示します」 映し出された映像には、渦を巻いて吹き上がる竜巻のような風の流れが見える。ただし通常の竜巻が上方に向けて広がっていくのに対し、映し出されたそれは一定の直径を保っている。 「あれが、風牢……」 北の台地に向かう飛空艇の中で、フィアもウィグも、形だけでなくそれがただの竜巻でないことを知っていた。 北の台地。 エルフの住まう聖地において、人間の住む領土と同じ環境汚染の影響を受けた唯一の土地。 動植物は育ちが悪く、稀にではあるが奇形が生まれることもある。砂漠とまではいかないものの土も空気も乾燥して、砂埃を舞い上げる様は確かに領土で見られる光景だ。 とはいえフィア達から見ればほとんど問題ないレベルに思える。それでも、緑に護られたこの聖地では確かに異様な姿にも感じられた。 「竜巻の直径、風速等に変化なし。移動の気配も見られません。やはり自然現象ではないものと思われます」 マリノアの報告にフィアとウィグはノームを見、それから顔を見合わせ頷き合う。 「前方の竜巻を風牢と断定。クリフ、風の影響受けないとこで適当に止まって」 「了解。滞空モードに移行」 クリフの滑らかな操縦で、艇は中空に静止する。 「ウィグさん、フィアさん。本当にレヴィンさん達があの中にいるんですか?」 声音に違わず不安げな表情を見せるカレンに、フィアが眉を下げて答える。 「ん~、気配はちょっとわかんないかな。風もだし、精霊も多すぎて」 「熱感知……も、無理か。あれだけ砂が舞ってちゃな」 「はい。先ほどから試行していますが、センサーでは感知できない模様です」 「でもあれが『風牢』なのは間違いないんだろ? じいちゃん」 ウィグの言葉に答えながらマリノアは懸命にパネルを操作しているが、それらしい結果は得られないようだ。 水を向けられたノームが、フィアの言葉に重々しく首肯した。 「北の台地において、五百以上の風の精霊によって作られる『風牢』。其の内にて七日七晩を過ごし、天の裁きを待つのがエルフにおける唯一の刑。彼れに相違ない」 思念波でなく声に出して答えたのは、カレン達に配慮してのことだろう。アンドロイドである三人には精霊の思念波は届かない。 「水も食糧ももちろんなし。条件的には砂漠に近いから、昼はどんどん気温が上がって、夜になって陽が沈むとともに急降下して一気に零下まで落ちる。……餓死か衰弱死かは知らないが、よっぽど運のあるやつでなきゃ確実に死ぬな」 いやに冷静なウィグの言葉に、カレンが顔色を失くす。フィアは言葉尻を被せるように声を張り上げた。 「ウィグ! おっ前そういうこと言うなよな! それでなくても色々ヤバいってのに余計ヤな感じじゃんか」 「情報の収集・確認、及び整理は必須だろ。ここは領土とは勝手が違う上に、俺達は招かれざる客だ。自力でなんとかするしかない以上、なおのこと慎重にならないと……ミイラ取りがミイラになりかねない」 「そうじゃなくて気分の問題なんだよ! ったく、だからメカニックはイヤなんだよ。理屈っぽくてさあ」 「ああはいはい、悪かったよ」 そのメカニックとしての技術や論理的思考の恩恵を普段どれだけ受けているか――は、今のフィアには問題ではない。もちろん、ウィグにとっても。 今、最大にして早急に対処しなくてはならない問題は、目の前にあるただ一つ。 「とにかく、レヴィンもイフリルもシルフィも、あの中にいるのは間違いないんだ。なんとかして助けないと」 「然し彼れは良くも悪くも頑なだ。己の命と友の命、秤にかける愚は冒さずとも、迷いなく己が命を切り捨てる」 「それに、レヴィンは罰を受けることと引き換えに俺達の解放を約束させたんだろ? 自分の意思で逃げようとするとは思えない。……どうする?」 ウィグの問い掛けに、フィアは間を置かずに答えを返した。すなわち、 「決まってる」 深紅の瞳が、モニターに映し出された風牢をしかと見据える。強い意志を宿した瞳が俄かに輝きを増したのは、果たしてウィグの見間違いだっただろうか。 「こっちから突っ込んでって、引きずってでも助け出す」 低く告げる言葉に、飲み下しきれない苦みが混ざっていたのは思い過ごしではないだろう。それでもフィアは顔を上げ、決して視線を逸らすことなく、言い切った。 「絶対、――死なせない」 PR COMMENT オリジナル??
このお話はオリジナルでしょうか
でもエルフとかって、昔もどこかで見た様な… 何だかこのお話は羅奈らしいなぁ、と思いながら読みました。 繊細な感情がよく読み取れる。 オリジナルなら、続きが気になる Re:オリジナル??
おおっとぉ!反応してもらえると思ってなかったのでビックリです!
そうです、オリジナルですよー。キャラ (の基本設定と外見) だけならシンより古いという。 どこかで見たような……っていうのは、同じシリーズ?の話を以前にも書いてるので、それじゃないでしょうかね? 「創作殴り書き」 カテゴリーにあるやつです。 しかもなんだか嬉しいお言葉!繊細な感情が読み取れるだなんて、嬉しいやら恥ずかしいやら/// このシリーズは気紛れにコソコソ書いていこうと思ってるので、よければまた読んでやってください♪ MASTER | 2007/12/11 (Tue) 01:34:46
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