「……どうだった？」


「んー？ 強い人、だと思ったよ」
「強い、か」
「うん。意思が強くて、しっかり……えっと、自立？って言うんだっけ、そういうのしてて、冷たくて怖そうに見えるんだけどホントは優しくて、自分のことだけじゃなくて周りのこともすごくちゃんと見てて聞いてて、でも周りばっかりにならないで自分のこともちゃんとわかってる感じ」
「まあ、そんな感じだよな。――で、可奈的に見ると？」
「うーんとね……」


　意思が強いのは、強くなければ呑まれてしまうから。
　強く見えるのは、強くなければ耐えられないことを知っている彼女が、そう見えるように振る舞い、他者の中の自分を鏡として自分は強いのだと思い込もうとしているから。
　しっかりしているのは、しっかりしなければいけない環境にいるから。自立しているのは誰も助けてはくれないから。
　冷たく怖く見えるのは、そうして他人を寄せ付けないことで自分の負担が増えるのを防ぐ防衛策であり、同時に他人を寄せ付けなければ傷付けることもないから。優しさは彼女の本質。
　周囲を気にするのは、問題が起きたときにあるいは起きそうなときに、すぐに動いて的確な判断を下せるように、仲裁役が染み付いているから。
　自分のことをわかっているのは、自分以外にわかってくれる、わかることのできる人がいないから。


　彼女は、物理的にはともあれ、精神的には独りで生きてきたに等しくさえある。


「――……あの、可奈」
「うん、すごい悲しいよね」
「いや、うん、それはそうなんだけどさ。そうじゃなくて。……それってさ、『強い人』じゃないんじゃないか？ なんていうか……」
「そーだねぇ。んー、『一生懸命強い人になろうとしてる、普通よりは強いけど弱い人』……ぐらいかなあ」
「……なんか、矛盾してる気はするんだけど。……でも、そう、だな……」


　矛盾している。けれど否定できないのは、それが全ての答えだった。



―― 2010/02/20 10:48

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